「せ〜のっ」 「明日叶ちん、」「明日叶センパイ、」「明日叶」、 「「「「誕生日おめでと〜〜〜〜!!」」」 「わっ」 扉を開けた途端、破裂音と共に、色とりどりのシャワーが降ってきた。 思わず小さく声を上げて、肩を竦める。 ぱさり、と視界を覆うそれを髪からそっと外すと、見慣れた面々が笑顔で迎えてくれるのが見えた。 「主役のごっ登場〜〜♪」 「はいはいはい、明日叶センパイはこっち!」 後輩二人に押されるようにして、明日叶は部屋に踏み入れる。 「うわ………!」 食堂の最奥。 厨房とカウンターを隔てたすぐそこにセッティングされた長テーブルには、結婚式場のCMで見たことがあるような、段重ねの白いケーキがでん!と鎮座していた。 その周りを囲むように並べられた、大皿料理の数々。 唐揚げ、チンジャオロース、コロッケ(の山)、天麩羅、刺身の盛り合わせ、コンロの火にかかった鍋と、ざっと見渡しただけでも和洋中、とんでもない量の料理が埋め尽くしている。 「いや〜、みんなが食べたいものを用意してみたらさ、全然まとまりがなくなっちゃって」 ははは、と照れたように笑う亮一さんに、桐生さんが溜息交じりに突っ込む。 「お前の刺身が一番場違いだろう」 「いや、だって!めでたい席に鯛は必要だろう!?」 綺麗に盛り付けられた白身魚は、どうやら新鮮な鯛らしい。 「タカの、鍋ってのもオツですよねぇ」 「温かいものが良いと、文句を言ったのは誰だ」 「いや、だっていくら汁物担当って言ってもさ、冬場にヴィシソワーズはないかなって……」 「文句があるなら食べるな」 「いやいやいや、ありがたくいただきます」 ふん、と桐生さんが鼻を鳴らす。 「いやぁ、やっぱりパーティっつったら肉でしょ!」 太陽は主に唐揚げとコロッケの皿を、涎を垂らさんばかりに見詰めている。 「犬は骨だけ食べてなよ」 「ぬわにぃ〜〜!?」 ぼそっと呟いたヒロの言葉を聞き逃さず、太陽が吠える。 それを無視して、ヒロは興さんの手を引く。 「ねねっ、明日叶ちん!ボクと興ちゃんの渾身の作品!料理なんかより〜、ぜぇったい!先に食べてよね!!」 「うむ。生くりーむ、いつもの3倍はつかった」 神妙に報告する興さんに、ヒロがにこにこと頷く。 「あ、あの上の飾りはね、中川さん」 指差す先には、恐ろしく緻密な砂糖細工が飾られていた。 9体の小さな小さな人形のようだが、よく見ると、デフォルメされたグリフのメンバーを模っているらしい。 「すごい………」 ぽかんと見上げながら、呆気にとられていると、髪を揺らして横から眞鳥さんが覗き込んでくる。 「ふふふ、似てますかねぇ?こういうのは初めてなんですが、手仕事は得意なもんで。ちょーっと真剣になっちゃいました」 これがアンタです、と、ちょいちょいと長い指でその内の一体を突っつく。 明日叶だというその砂糖人形は、他の8体の人形たちに囲まれるようにして、クリームの舞台に立っていた。 「お、明日叶。ようやくお出ましか?」 ひょい、と厨房からディオが顔を覗かせた。 そういえば、先ほどから油が弾けるような軽快な音が奥から聞こえていた。 「ディオ!?」 見慣れぬ格好に、明日叶は目を見開く。 人一倍立派な体躯をしたこの男は、今日はジャケットの代わりに、白い調理服を身に付けていた。 「待ってろよ、今出来る」 ジャっと、一際強い音をさせたかと思うと、ディオは片手でこれまた巨大な平皿を軽々運び、皆の目の前に置いた。 「さ、出来たぜ。これで最後だな」 「ひょ〜〜〜ウマそ〜〜〜〜〜!!」 「ん〜、食欲をそそるねぇ」 置かれた皿から立ち上る、オリーブオイルとトマトの濃厚な香り。 そこに、ふわりと立ち上る湯気に混じって、香辛料の刺激が鼻腔をくすぐる。 出来合いのソースなんかじゃない、一目で、すべての工程が彼の手によるものだと分かる。 「アラビアータだぁ!」 「…もしかして、パスタも手作りだったりします?」 眞鳥さんの質問に、ディオは当然だろ、と言わんばかりに鼻で笑った。 「ちゃーんと、本場もんだぜ?」 「みんな器用だねぇ」 「亮ちゃん、人のこと言えないでしょ」 「麺は俺が切った」 ずいっと慧が出てくる。 「ふ、藤ヶ谷さんが!?」 「……不服か」 「いやっ!?そんなことないッス!」 微妙な顔で固まる後輩二人に、ディオがくつくつと肩を震わせて笑い出す。 そういやさ、と続ける。 「こいつ……、実はすっげぇ細けぇの。『手伝えることはないか』って言うから、捏ねた生地を細く切れって言ったんだけどよ」 こらえきれないとばかりに、ディオが噴出した。 「真っ剣な顔して、それからずっと黙ってるからよ。しばらくして横から覗いたらさ」 そこで言葉を切って、息を吸う。 「糸みたいな麺作ってやがるんだよ。お前、それ素麺かよ!!って」 話を聞いた他のメンバーが、思わず顔を横に向ける。 その全ての肩が、小刻みに揺れている。 げらげらと笑い続けるディオを横目に睨んで、慧が言った。 「お前の指示不足だ」 「限度があるだろ!」 その頬が微かに染まっているのは気のせいではないだろう。 こんな風に、ディオが人前で相好を崩して笑い転げるのも、慧が自ら皆の輪の中に入っていくのも、本当に珍しい。 どうしよう。 じわじわと熱いものが込み上げてくる感覚に、明日叶は急いで瞬きして耐える。 「あの、あの……本当に」 気の利いた言葉が全然出てこない。単純な、本当に簡単な言葉しか。 それでも今、自分に出来る精一杯の表現で。 「ありがとう、ございます………っ」 僅かに揺れた語尾は隠せなかった。 それでも、誰も笑ったりなんかしない。優しい目が、自分を見返してくる。 「よっしゃーー!!!明日叶センパイ、喜んでるーーー!!!」 太陽がガッツポーズで叫ぶ。 「お前、一番何もしてないじゃん……」 「喜んでもらえたなら嬉しいよ」 「別にお前のためにしたことじゃない」 「タカ。この状況でそのセリフは、ただのツンデレですよ」 「桐生さんがツンデ……っ………ぶっ……」 「何か言ったか」 「いぇっ!?何も!?」 「お前、あの素麺どうしたんだよ」 「………(無言で指を差す)」 「ああ、サラダにしたんですねぇ。なるほど〜」 「いや〜、藤ヶ谷が『これ』って持ってくるから、ありがたく使わせてもらったんだけどね。そんな経緯があったとは」 「……無駄にすることはないだろう」 「ねっねっ、もう食べていいッスよね!?」 「おいこら、皿貸せ。具と麺と、バランス良く盛らなきゃ足りなくなんだろ」 「兄貴〜、俺、大盛りでっ!」 「主役は明日叶だっつの!おい明日叶、どんだけ食う?」 「さすが、二階堂のトコの魚は、いつも美味しいですねぇ。あ、明日叶、ワサビ要ります?」 「ふん……お前にはネギ大盛りが相応しい。これで少しは頭の回転もマシになるんじゃないのか」 「あすか、ケーキ、食う」 「ほら、冷めちゃうよ、明日叶ちん!」 テーブルに群がる面々が、口々に自分を呼ぶ。 「さ、早く食べよう」 ぽんぽんと、亮一さんの大きな手が頭を叩く。 「………はい!」 熱でひりひりする目元を乱暴に拭うと、明日叶は笑顔で駆け寄った。
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◆あとがき◆ 明日叶BD、後日談でした〜♪ 先週アップしたBD記念ss内で「来週パーティを〜」と振ったので、実際にやらかしてみました。 内容無いお話ですが(^-^;)楽しい雰囲気を出せたらなぁと。 グリフメンバーの掛け合いが書けて、雪織自身が一番楽しかったですvv BD当日の「その後」も、続けてアップする予定。こちらは大人め注意(笑) 2010.3.6 up |
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