いきなり始まります。 スクロールでどうぞ。↓↓↓ 「ひ、ぁ………っ…!」 ぺちゃ、と独特のべたつきが先端を覆い、思わず腰が跳ねた。 浅く腰掛けていた木製の椅子が、かたん、と音を立てる。 触れたのは自分の指のはずなのに。 こんなところに触れるはずのないものがその指先にあるせいで。 ―――どうしようもなく卑猥な今の光景が、全身の神経を敏感にしてしまっている。 「おいおい、大丈夫か?ガッティーノ」 すぐ傍で膝を突きこちらを見上げているディオが、可笑しそうに尋ねてきた。 ニヤニヤと心底楽しそうな表情に、明日叶は精一杯の睨みを返す。 ―――が、そんな必死の抵抗も、喉の奥の小さな笑い声で一蹴される。 「んな潤んだ可愛い目で睨んだって、ちっとも説得力ないぜ?明日叶」 「……っるさ……」 「ほーら。まだ、塗れてねートコあんだろ」 「……っ……」 つんつんと、悪戯を仕掛けるように、まだ皮膚の色を剥き出しにしている部分を爪先でつつかれる。 白く斑にコーティングされた自分の猛りが、その動きに合わせてゆらゆら揺れるのが視界に入り、明日叶は堪らず目を瞑った。 「んー?目ぇ閉じてやんのか?…ま、いいけどな。ほら、じゃあもっと全体握れよ」 「あ……っ、待っ……やっ…!」 ディオの大きな手が、恐る恐る指先でクリームを乗せていた明日叶の手の甲に重なり、そのまま屹立を握り込むように閉じる。そのまま軽く数回、撫で付けるように上下に扱かれた。 先端から絶え間なく伝い落ちていた先走りと、手のひらに残っていたクリームとがミックスされて、明日叶の手の中で驚くほどの大きさで水音を響かせる。 先ほどまでの胸元への執拗な刺激と、今この状況に煽られたせいで既に熱しきって涙を零すそれは、甘い痺れに覆われて、手の中で浅ましく強度を増した。 「……っく……ぅ……」 腰を襲う猛烈な射精感を、奥歯を喰いしばってやり過ごす。 これ以上の刺激は我慢出来ないと、力の入らない手で、それでもなんとかディオの手を振り払った。 「すっげ。……ガッティーノ、お前、興奮してんだろ」 目を瞠って明日叶の熱を凝視するディオが、ちらりと舌なめずりをしたのが見えた。 「ちっ……なわけ…っ、な……」 「へぇ?でもお前、もうこんなだぜ?」 くつくつと笑いながら、ディオの指が先端を深く掬い取った。 ギリギリのところで一番敏感な場所を抉られ、これ以上無いというほど全身が燃え上がる。 「ぅあ…っ」 「俺の手じゃすぐイっちまうからって、お前に任せたのに。これじゃあ変わらねぇか」 別に皮肉でも何でもないように淡々とそうボヤくと、ディオは果汁に濡れた人差し指を自分の舌でぺろりと舐め取る。甘……、と小さく呟くと、明日叶を見上げてふと目元を和らげた。 「あーすか」 「なん、…だよ……」 行為を開始して初めての柔らかな声に、今までとは違う意味で鼓動が跳ねる。 と、上体を伸ばしたディオが、そっと目尻にキスを落とした。 「あんま、泣くな。別に、今日はお前を泣かせたいわけじゃない」 そろり、と大きくて熱い舌が、明日叶が気付かぬうちに零していた涙を舐め取る。 まるで、幼子をあやし宥めるような優しさで。 だが、嘘付け!と心の中で反論したのと同時に、その声が聞こえたかのような絶妙なタイミングでディオは口角を上げた。 「ま、“鳴かせる”つもりではあるけどな?」 音声的には全く変わらず聞こえるその単語を、ディオの意図する意味通り的確に脳内変換できてしまう自分に、こんな時だというのに呆れながらも感心してしまう。 「さーて。どうする?」 「ど…うって、……」 すっとぼけたように眉を上げるディオが、立ち上がって明日叶を見下ろしてきた。 「俺としては、そろそろ食べ頃なんじゃねーかって思うんだけどな」 煌めく獣の瞳が、明日叶の全身を舐めるように見回す。 視線だけで、犯されているような気分にすら、なる。 ディオの目に映っているだろう、素っ裸で椅子に座り、クリームで体中をびちょびちょにしている自分の姿を想像して、明日叶はこれ以上無い羞恥に身体を染め上げた。 だが、その感情にすら煽られ追い詰められて、もう、どうしようもない。 重苦しく、けれどたまらなく甘く深い痺れに浸された腰のあたりが切なくて、知らず知らず椅子の上でもぞもぞと尻を動かしてしまう。 「ディ、オ……っ、」 「ん?どうした、ガッティーノ」 分かってるくせに呑気に問い返してくる態度が憎らしくて仕方なかったが、それでももう、これ以上は無理だった。あと、ほんの少しの刺激が加われば、他愛も無く達してしまうのが自分でも分かってしまう。 けれど。 霧散しかける、自分の残り少ない理性が、どうにか解放の誘惑を拒み続けているのには、ちゃんと理由があった。 快楽でドロドロに溶かされた思考の片隅で。 これは、目の前にいる男のためなのだからと、自分が彼を喜ばせてやることこそが今回の主旨なのだからと。 そう健気に叫ぶ理性が、明日叶の自分勝手な解放の欲求に、寸でのところで待ったをかけている。 「ディ、オ」 息が、荒い。 はぁはぁと、喉を焦がす自分の熱い吐息が、静かな部屋にこだまして恥ずかしい。 「だーから、なんだ?ガッティーノ」 比喩なんかじゃなく、本気で顔から火柱が上がりそうなセリフを、震える吐息とともに必死で押し出す。 「も、っもう……」 「我慢出来ねーか?」 「…っじゃ、なく、って…」 いや、実際そうなのだが。 でも、そうじゃなくて。 「なんだよ」 いつの間にか、楽しそうなニヤニヤ笑いの中に、見つめれば切り刻まれてしまいそうなほどの鋭さを増した視線が、明日叶を言葉を待ち侘びている。 「……きた、から……」 「ん?」 「もっ……出来、た…っから………っ」 涙で滲む視界を、どうにかディオの方に向ける。 そして、クリームまみれの両手で、二種類のコーティングのせいで、もうじゅくじゅくに濡れそぼってしまった熱の塊を、支えて示す。 「……、て」 「聞こえねーな」 意地悪くそう言いながら、それでもディオは腰を折り口元に耳を寄せてくれて。 もはや泣き声で囁いた明日叶の言葉に、低く潜めた声でCon piacere.と短く応えると、再びそこに膝を下ろした。 ―――その声を聞いてようやく、ディオもギリギリだったのだと分かって、明日叶はほんの少し安堵する。 そのまま、躊躇い無く下腹部に寄せられた顔の気配に、明日叶はこれまでにない胸の昂ぶりと、やるせないほどの期待感が襲うのを感じた。 一度だけ、欲情する自身をからかうように舌先でつつかれた時とは、訳が違った。 肉食獣が、捕らえたばかりの獲物の一口目を、嬉々として頬張る時のように。 大きく開けたその口から、一瞬、真っ白で大きな歯が見えて、思わず背筋が凍る。 だが次の瞬間、待ち侘びていた感覚が、極限まで張り詰めていた部分を包み込み、明日叶は全身を震わせてディオの頭を掻き抱いた。 「あぁ…っ、はっ…っ……」 ただ含まれただけだというのに、がくがくと腰の震えが止まらない。 そんな明日叶に簡単に止めを刺すように、ディオの大きな舌が、明日叶の分身を含んだままの口中で、ぐるりと大きくうねった。 生温かな空間の中で、筋、節、先端と、思い切り感じやすいところを一気に嬲られて、明日叶の口から鋭い悲鳴が上がる。 「ひっ………」 ぎゅう、と腕の中の頭を一際強く抱き締めたかと思うと、今度こそ、椅子が激しい音を立てた。 びくん、びくん、と何度も何度も跳ねる腰を、力強い腕が抱き締め返してくれる。 瞼の裏で、ちかちかと忙しなく光が弾けては散った。 限界まで昂ぶった熱の放出は、驚くほど長く続いた。 突如訪れた強烈な快感に、その証を押し出す管の内側が、びりびりと引っ掻かれるような痛みすら伴う。 「いっ……ぁ……っぁ…っ……は、ん…っ……!」 そんな凄まじいまでの吐瀉感に必死で耐える明日叶をよそに、ディオは容赦無かった。 弾けた果汁を喉を鳴らして飲み下し続けると、ひくひくと強すぎる衝撃に力無く震えるそれを窄めた唇で扱き上げ、最後の名残を僅かに浮かべる先端を、思い切り強く吸い上げた。 「ディ……っオ……も、っ……だめ……痛……っぃ……ぃぃ…っ」 解放の絶頂を迎えた直後の、敏感になりきった場所への強すぎる刺激は、もう火傷のような苦痛との紙一重で。 経験したことのない凶暴な快楽に、明日叶は怯えに身を縮めながら、痛い、いたい、と呆けたように繰り返していた。 最後にじゅっと大きな音を立てて全てを飲み干すと、ディオはようやく顔を上げた。 「旨かった。ごっそーさん」 「……ぁ……っ、ぅ………」 ぐらぐらと回る視界が、白くぼやける。言葉が、出ない。 「おい、明日叶。大丈夫か?」 ちょっとだけ心配そうな色を乗せた声が、明日叶の名前を呼ぶ。 大丈夫。 そう伝えたくて、明日叶はかくん、と首を縦に振った。 あんなに強かった痛みは、あっという間に心地良い虚脱感に溶けてしまって。 今はもう、整わない呼吸だけが、先ほどまでの張り詰めた状況を物語っている。 「悪かった。ガッティーノ、ごめん」 珍しく殊勝な様子で頬を撫でるディオの様子を見て、明日叶は初めて自分が泣きじゃくっていることに気付いた。ひっく、ひっくと喉が引き攣れるのを止められない。 そうか、視界がクリアじゃなかったのは、このせいか。 そうぼんやりと、他人事のように考える。 「……かった、か?」 掠れる声で、そう聞いてみる。 どうにか言うことを聞かせて吊り上げた口角が、微笑みの形をとる。 そんな明日叶の仕草に驚いたように目を見開くと、ディオは真剣な面持ちで頷いた。 「ああ。すっげぇ、旨かった」 そう言ったかと思うと、深く、けれど慎重に、唇を合わされた。 荒い呼吸を繰り返す明日叶に、負担を掛けないように。 翻弄出来る限りし尽くすいつものこの男からは想像出来ないほど優しい、気遣いに満ちたキスに、ひたひたと心が満たされるのが分かった。 「……なら、よかった…」 ぐったりと背凭れに寄り掛かった身体の、胸のあたりが温かい。 ―――と、だらりと投げ出された明日叶の手を、立ち上がったディオが導いた。 「……っ」 「……やべぇ。ガッティーノ、お前、エロすぎ」 布越しにも分かる、その張り詰めた熱さと、尋常じゃない質量。 明日叶の手が触れた瞬間、いつも余裕に満ち満ちたその精悍な顔が、何かを堪えるように、無防備なしかめ面に変わるのを、確かに見た。 目の前の男の―――悔しいけれど愛しくて仕方のないこの恋人の、見苦しいまでの本気の欲求を、今なら引き摺り出せる。何故かそんな気がした。 見てみたい。 いつも翻弄されてばかりの自分。 そんな自分に、どうしようもなく狂うこの男の姿を、見てみたい。 出し尽くしたはずの欲情が、凝りもせず体内で蠢き始めるのが分かる。 自分の中にあった、こんなに薄暗く、根深い欲に、明日叶自身も驚きを隠せない。 けれど。 「ディオ」 導かれるまま撫でていたその場所を、ぎゅ、と一度だけ強く握りこんだ。 「………っ、んだよガッティーノ、……やる気か?」 ふてぶてしく笑みを崩さないディオに、明日叶も不敵に笑ってみせる。 「欲しいって言ったのは、そっち、だろ」 言い終わらないうちに、抱き上げられてベッドに放り出される。 ああ、俺は馬鹿だ。 詐欺師の本音を引き摺り出す代償に、明日はもう、立ち上がれない位の覚悟はしておいた方がよさそうだ。 ―――それでも。 明日叶は、とどめの言葉を口にする。 「誕生日、おめで、とう、ディオ。………っぁあ……っ!」 悲鳴に変わった祝いの言葉に、捩じ込んだ熱量で応えると、ディオは珍しく余裕の無い声で囁いた。痛々しいほど剥き出しの、危ういまでの本音で。 「Grazie mille. 明日叶」 |
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◆あとがき◆ お・わ・っ・た………!!! ようやく完結ですディオ誕記念!! もう何も言うまい。とにかく遅くなってすいませんでした、その一言に尽きます orz こんだけ引っ張っといて、時間掛けといて、本番無しかよ!との突っ込みは甘んじて受けます。 私も正直、びっくりなんだもの……!!(涙目) 生クリームに翻弄されすぎた。固執しすぎた。もうキッパリと認めます。 兄貴には、珍しいパターンのやらしい明日叶ちんを拝めたってことで勘弁して頂きたい!(土下座) とにもかくにも、最後のセリフを兄貴に言わせたいがために、こんだけ長くなろうとは。 (しかもそれが3ヶ月も後になっちゃうとは……げほごほ) でもまぁ、文中からも分かると思いますが、書いてる本人は異常に楽しかったです(笑) ディオ、改めて、お誕生日おめっとさん!! 2010.6.13 up |
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