せっかくだから、何か気の利いたものでもあげられればよかったんだけど……。 明日叶は自分の準備の悪さに溜息をついて、太陽に向かって正直に言った。 「ごめんな。パーティが今日だってこと、すっかり忘れてた。何か用意しててやればよかったな」 こんなに完璧な仮装姿まで見せてくれたのに。 お祭り気分に水を刺すようで、少し胸が痛んだ。 「何も……持ってないの?」 ちらり、と上目遣いで伺うように、太陽が聞いた。 「ああ」 「ほんとにほんと?」 「うん、本当にごめん……・、んぅっ!?」 最初に「お菓子持ってないの?」と尋ねられた時に、気付くべきだった。 言葉の意味とは裏腹に、妙にその声が嬉しそうに弾んでいたことに。 かくして、謝り終えるかどうかのうちに、思いきり腰を引き寄せられたかと思うと、そのまま強引に唇を塞がれた。 運良く自分達以外には誰もいなかったが、それでもここは廊下だ。 いつどこのドアが開いて、誰が出てくるともしれない。 「なっ、なにっ、何するんだ!!」 唇が離れた瞬間を狙って、思い切りその胸を突き飛ばした。 けれど、一度だけそろりと舌の表面を舐め上げられたその感触の余韻のせいで、手には悔しいくらい力が入らない。 動揺する明日叶に、明日叶の抵抗など軽く受け流した太陽が片目を瞑って答えた。 その口元が、必死で笑いを堪えるかのように、うずうずとしている。 ―――もう、楽しくて仕方ないと言わんばかりに。 「だぁって、お菓子もらえない場合は、イタズラしてもいいんでしょ?センパイが教えてくれたんじゃないっスか」 「……・!!」 確かに、数日前にパーティのことを聞かされた時、ハロウィンのイベントの内容を詳しく教えてやったのは明日叶だった。 「そ、そうだけど……・っ、悪戯ってお前、俺はこういうことを言ったんじゃ……!」 間違っても、こんなアダルトな悪戯を指したわけじゃ決してない!!断固、違う!! そう必死に弁解する明日叶を見遣りながら、太陽がぺろり、と小さく舌なめずりをしてみせた。 思わせぶりに見せた赤い色が、今の外見と相まって、なんだかとても卑猥に見えて。 (食べられる―――!) 何故だか唐突にそんなことを考えてしまい、明日叶は一気に赤面した。 「んじゃ、ここじゃなんだし、センパイの部屋でゆ〜っくりイタズラさせても〜らおっと」 「……っわ!おい、ちょ、下ろせって、バカ!!」 一瞬の隙を突いて、ひょいと横抱きにされてしまった。 そのまま、大股で明日叶の部屋へ向かう。 「こら太陽!ま、待てって!!」 「だ〜め♪お菓子くれなきゃ、イタズラしちゃうんだも〜ん」 のっしのっしと、狼が森の奥へ消えてゆく。 しっかりと、捕まえた愛しい仔ウサギを口にくわえて。 「わっ、おまっ、どこ触って……!やめ……!!」 ぱたん、と軽快な扉の音がすると同時に、廊下にはまた静けさが戻ってきた。 今夜はハロウィン。 この世のどこかで、本物の狼男が、その本性を現しているとかいないとか……・ |
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ED2 「Trick大成功♪」 |
◆あとがき◆ ハロウィンお遊び企画、EDその2でした♪ こちらは「Trick大成功」EDですvv ラブラブな太明日のこと、悪戯といえばもうイチャラブしかないでしょう! 狼太陽に、存分にイタズラされちゃえばいいと思います♪ きっと部屋ではめくるめくイタズラの数々が………ふっふっふ(笑) ちなみにこちらのED、後にまだちょっとした小話が続くはずでした。 明日叶ちんの貞操の危機を救おうと全速力で走ってきたものの、一瞬の差で叶わなかったヒロと、 一緒に引っ張られてついてきた興ちゃんのやりとりでしたvv 長くなるので割愛しましたが。ちなみにヒロの仮装はケット・シーという設定でした。 わんことにゃんこ……可愛いなぁもうvv お楽しみいただけたら幸いです♪ 2010.10.19 up |
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