かちゃ、とノブの回る音が聞こえた。 聞こえたのはその小さな金属音だけで、明日叶は重たい瞼を押し上げながら改めて感心する。―――この男は本当に、気配を消すのが上手すぎる。 衣擦れの音がしたかと思うと、ごそごそと背後でシーツを捲る気配がした。 「遅かったな」 まだ眠気の残る声でそう言うと、後ろから大きな身体が覆いかぶさってきた。 太い腕が、脇の下から腰を攫う。 その遠慮の無い力加減に、明日叶はふと眉を寄せた。 「ディオ………お前、飲んでるだろ」 頭の後ろで、ディオが低く笑う。 同時に強く立ち上る、アルコールの匂い。 「なんだよ、悪いか?」 明日叶の髪に鼻先を擦り付けるようにして、甘えかかってくる。 「週末の夜だってのに、寮でぼんやりなんて、勿体無くてしてられっか」 いつもより少しだけ間延びした話し方と、珍しく加減を知らない腕の力が。 彼が相当量、飲んできたのだろうことを物語っている。 「悪かったな、勿体無い過ごし方してる奴で」 拗ねたように言い返すと、腰に回されていた手が、力任せに顎を掴んできた。 不自然な姿勢に眉を寄せると、片肘を付いたディオに口付けられる。 「……っ」 知らず宙に浮いた片手が、相手の剥き出しの肌に触れた。 触れた手のちりちりする感覚と、吹き込まれた吐息の熱さに、思わず喉が鳴る。 「……っ……ふ……」 普段よりずっと熱い舌が、遠慮無く侵入してくる。 いつの間にかくるりと正面を向かされた身体が、その熱に煽られ始めるのが分かった。 「……っ…、ディ…オ………っ…」 「ん〜?なんだよ………」 気だるげに、しかし目だけは爛々と輝かせたままディオが答える。 その一瞬、唇が離れた隙に身体を捻り、両手でその広い胸を押しのけた。 「なんだよ明日叶」 キスを与えながら、器用に片手でパジャマを脱がせにかかっていたディオは、不満気に眉を上げた。 ―――唇を離しても、中々息が整わない。 寝起きの無防備な身体には、こいつのキスは刺激が強すぎる。 それに呼応するように、ディオが酔って帰ってきた夜に幾度と無く経験させられてきた、とんでもなく激しい情事の記憶が、否応無く明日叶の脳と肌を焦がし始める。 現に今、この呼吸は、口付けられただけで浅ましく上がってしまっていて。 奥底で熱を求めて疼く欲しがりな自分と、けれど反対に、痛みと紙一重の快感に竦むもう一人の自分がせめぎ合う。 新鮮な空気を思い切り吸い込んでから、明日叶はぴしりと言った。 「酒臭いから、いやだ」 「……あー?」 我ながら、苦し紛れな言い訳だとは思う。 一瞬目を瞠ってから、ディオは目に見えてがっくりと肩を落とした。 「お前な………女じゃねーんだからよ……」 「嫌なものは嫌なんだ」 子供が駄々を捏ねるように、わざとらしく顔を背ける。 正直、酒には強くない。 けれど何よりも、酔ったディオに乱暴に抱かれるたび、まるで自分までもが酔わされているかのように、普段よりずっと淫らに彼を求めてしまう自分が怖かった。 嫌だと、やめてくれと叫びながら、抱きこんだディオの身体を離すまいと締め付ける自分の中の天邪鬼な欲望が、我に返るたび死にたくなるほど恥ずかしい。 「……ったく、分かったよ」 小さく舌打ちが聞こえて、渋々という風に巻きついていた腕が外れた。 強引だけど、素面の状態で俺が一度嫌だと言ったら馬鹿みたいに頑固なのは、こいつが一番よく知っている。 明日叶は離れていくアルコールの香りを、ほっとしたようなどこか物足りないような、複雑な気持ちで見送った。 「その代わり、お前も来いよ」 思ったより不機嫌ではなさそうな声に、思わずきょとんとする。 ディオは、ちらと時計に目を遣ると、脱いだまま椅子に引っ掛けてあったシャツを無造作に羽織り、顎を杓った。 「………どこに」 怪訝な顔で尋ねると、ディオは笑って応えた。 「風呂だよ、風呂」 酒抜くには一番手っ取り早いだろ、と、どこか上機嫌な声。 「一緒に来ねーなら、お前が嫌がってもこのまま襲ってやる」 一瞬、ニヤリと目を眇めると、首を傾けて明日叶に問うてくる。 さぁ、どうする? 「………はぁ」 のろのろと身体を起こし、明日叶はベッドを降りた。 なんだかんだ言って、こいつのペースに巻き込まれずにいられた試しなどない。 ここで拒んで、荒々しくいたぶられるか。 同意して、少しでもこいつの獰猛さを静めるか。 ―――どちらが賢明かは、言われなくても分かっている。 (事に及ぶ、ということに関しての選択肢はないわけだ) 「……はぁ」 仕方無いな、ともう一度溜息を吐く。 ―――心の底で生まれた、小さな期待には気付かない振りをして。 明日叶は、既に廊下へ出てしまったディオを追いかけた。 「さっすがにこの時間じゃ、誰もいねぇな」 ひゅっと軽く口笛を吹くと、ディオは躊躇い無く着ていたものを脱ぎ始めた。 深夜の大浴場。 その手前に設けられた脱衣スペースには、誰の影も無い。 そのことが、明日叶を少しだけ安堵させる。 自分も男だから、別に過剰に意識しているわけではないのだが、どうも見ず知らずの人の中で肌を晒すのは苦手だった。 (チームのみんなとかなら、平気なのにな……) 時折一緒になる面々を思い浮かべて、ふとそう思う。 だが。 「なんだよガッティーノ、早くしろよ」 さっさと服を脱ぎ捨てたディオが、急かしてくる。 「っ、分かってる」 煌々と照る蛍光灯の下、惜しげも無く晒されたその堂々たる体躯。 無駄無く美しい筋肉に覆われた褐色の身体は、同性から見てもとても魅力的で。 太陽なんかは、『あ〜あ、兄貴みたいなガッチリムッキムキ〜!な身体、憧れっス〜!』と、よく羨ましげにボヤいている。 けれど明日叶にとっては、羨望と同時に、思わず顔を背けてしまうほど眩しくも見えた。 しなやかで力強い、まるで猫科の大型獣のようなこの身体が、毎夜自分を組み伏せ、奪い、翻弄し、自分すら知らない自分を引き摺り出してしまうのだと。 それを嫌というほど見せ付けられているようで、たまらなく恥ずかしい。 (……前言撤回) 明日叶は胸のうちで呟く。 仲間内でも、こいつの前だけは例外だ。 「なんだよ明日叶、見蕩れたか?」 「そっ、そんなんじゃない!」 面白そうに腰を折って顔を近づけてくるディオを避けると、明日叶はわざと乱暴に服を脱ぎ始めた。 意識なんてしていない、全然どうってことないのだとアピールするように。 そんな明日叶をニヤニヤと面白そうに眺め遣ると、ふとディオが背中を向けた。 「…………っ……!」 タオルを取ろうとしたのだろう。 僅かに屈んだ背中が、一瞬、より明るく光に照らされる。 それを見た明日叶の顔に、一気に朱が走った。 「お、俺、先入る!!」 「んあ?おい明日」 ディオの言葉を待たずに、明日叶はバタバタと浴室へ駆け込んだ。 シャワーブースに入ると、明日叶はずらりと並ぶボックスの一つに滑り込んだ。 「………はぁ」 深く息を吐きながら、コックを捻る。 頭上からやや熱めのお湯が降って来て、明日叶は思わずぷるぷると頭を振った。 けれど、すぐにさっきの光景が脳裏をよぎる。……振り払えない。 「あ〜〜〜〜〜」 シャワーに打たれながら、意味不明の呻き声を上げてみる。 間抜けな声でも出せば、少しは冷静さが戻ってくるかと。 顔が燃えるように熱いのは、お湯のせいだけじゃない―――絶対。 どくどくと、不自然なまでに激しい鼓動が身体中を響かせる。 「あ〜〜〜も〜〜〜〜〜」 もう一度、ふるふると頭を振ったその時。 「なーにしてんだよ、子猫ちゃん」 背後から唐突に声が掛かった。 ―――だから、気配を消すのが上手すぎるんだ、お前は。 思わずびくりと肩が跳ねてしまい、誤魔化すように明日叶は強い口調で言った。 「……なんだよ、狭いだろ」 「だな。だいぶ窮屈だ」 そう言いながらも、ディオは無理やり身体をブースの中に捻じ込んでくる。 背後でキィ、と扉の閉まる音がする。 「別のとこ行けよ」 振り返ることなくそう突っぱねると、大きな手のひらが目の前の壁に寄りかかるように現れた。 狭いシャワーブースの中で、更に密着度が上がる。 正面に壁、背後にこの男。 完全に挟まれて、逃げ場は無い。 「なーにさっきから意識してんだよ」 下腹にぞくりと響くような、低くて甘い声に囁かれ、明日叶の腰が僅かに震えた。 「別に、してない」 「これで?」 「………っ!?」 後ろからいきなり、耳朶を甘噛みされた。 「こーこ。真っ赤だぜ?ガッティーノ」 くすくすと楽しそうな笑い声が、水音と共に反響する。 酔っているせいか、語尾に微かに蕩けるような声音が混じり、ディオの元々の美声をより魅惑的なものにしている。 「や……めろ、よ……っ」 「あぁ?身体はそう言ってないみたいだぜ?」 「ひっ…ぁ……」 ぺろりと左耳の裏側を舌で掬われて、シャワーとは違う水音が鼓膜を犯す。 「なぁ……明日叶………」 耳朶を食みながら、ディオが囁いた。ざわざわと、それだけで肌が粟立っていく。 「な……んだよ……っ……」 必死で冷静さを保とうとするが、あまりの甘い刺激に喉の奥で言葉が引っ掛かる。 ―――所詮、無駄な足掻きだというのも分かっているのだ。 部屋でキスされたあの時から、いや、こいつが帰ってくるのを待っていた時点で。 抗えるわけがないのだから。燻り続けるこの、自分の中の熱に。 「……っぁ……っ」 いつの間にか、するりと鎖骨を撫でた手が、胸のあたりまで降りてきていた。 後ろから死角になっているだろうその場所を、ディオの無骨で、けれど器用な指は的確に探り当ててくる。 思わず身体を捩ろうとするが、背中はディオの身体にぴたりと密着していて避けられない。 「ここ、磨りガラスだろ?外も明るいからそこまでくっきりとは見えねーけど」 「だ……から、なん……っ……!」 人差し指と親指で巧みに突起を擦り上げながら、ディオが心底楽しそうに言った。 「誰か来たら、ヤバいかもな」 そう続けると、これまでのやわやわとした緩慢な刺激を強引に切り上げるかのように、爪先でそこを弾いた。降り続けるシャワーの湯で、滑りやすくなっていたそこは、ディオの指先に勢いを与える。 「……やっ………っ」 思わず上がった鋭い悲鳴に、ディオが意地悪げな声で囁く。 「ほーら、ガッティーノ。そんな声出してたら」 そうディオが言いかけた、次の瞬間。 「明日叶?」 聞き慣れた声。 明日叶は、顔から一気に血の気が引くのを感じた。 水を跳ねる足音が近付いて来る。 「……っけ、い……?」 「やっぱり、明日叶か」 抑えめな落ち着いた声に微かに混じる、親しげな温度。 他人に心を開きにくい慧は、幼馴染の明日叶にだけは、こうして時折素の部分を垣間見せてくれる。―――だが。 「………っ」 硬直する身体を、ディオがからかうように抱き締めた。 「だーいじょうぶだ。このシャワーブース、足元まで壁あるからな」 宥めるようにそう囁いたかと思うと、胸の突起をいたずらに摘む行為を再開する。 「っぁあ………っ…」 「けど、そんな声出してると、気付かれるかもな」 「明日叶?どうかしたのか?」 「………っ!」 もう、すぐ近くに聞こえる、慧の声。 「な、なんでも、ない……よ…っ」 「そうか?」 少しだけ不安そうな声。慧が訝しむのが気配で分かった。 「け、慧は……ぁっ…、トレーニング帰り、か……?」 胸元で動き回る指先から必死で意識を逸らしながら、明日叶は言葉を紡いだ。 不自然に途切れる声は、シャワーの音が都合良く誤魔化してくれるようだ。 なんだ、これ。 なんで、こんなに。 「ああ。週末はいつもこの時間まで走ってる。風呂も大体この時間だな。明日叶は珍しいんだな、こんな時間に」 キッと斜め後ろを振り返ってディオを睨みつけるが、相手はどこ吹く風。 相変わらず楽しそうに笑っているが、その瞳の中に、いつになく獰猛な光が宿っているのを認めて、明日叶はぞくりと身体の芯がうち震えるのを感じた。 「あ…う、ん………なんか、寝付けなくて……っ」 なんで、こんなに感じるんだ。 友達の―――慧の前なのに……っ… こりこりと敏感な先端を刺激して回る指先を、確かに追いかける自分がいる。 こんな、いつ慧に見られてもおかしくないこんな状況で―――なのに、思わずその指を追って胸を突き出してしまいたくなる欲求が、確かにある。 ディオの指と熱いお湯のせいで、もうそこはジンジンと熱を持ってきている。 腫れているのか、伝うお湯までもが鈍い快感を与え、落ちていって。 生理的に浮かんだ涙で滲みそうになる視界を、歯を食いしばって耐える。 と、その努力を嘲笑うかのように、もう片方の手が下半身に伸びてきた。 「…………ぅぁっ!」 そのまま根本をぎゅっと握り込まれて、半ば勃ち上がりかけていた明日叶の半身が、鋭い痺れに、びくりとその身を揺らす。 同時に、耳元をくすぐっていた唇が首の辺りを強く噛んで、甘さと痛みの混在した感覚が、徐々に明日叶を追い詰めていく。 「………っねが……ぃ……だ、からっ……待て………って……!」 小声で、振り絞るようにディオに懇願する。 が、先ほどより確実に熱を増したディオの吐息が、耳元でそれを一蹴する。 「ダメだ」 「………んで………っ…!」 「コイツの目の前で、お前にこんな姿させてこんなことしてるなんて、なんかすげぇ………燃える」 いつもの余裕たっぷりなディオには珍しく、興奮に掠れた声が、明日叶の胸をじわりと炙った。それに呼応するかのように、腰元に熱い何かが集中していく。 「明日叶、あんまり長湯するなよ」 「ぁ……あ、あ………」 なんとか普通の声を絞り出して頷くと、慧はまたな、とブースの前を通り過ぎて行った。 遠くで脱衣所の扉が閉まる音を確認するや否や、明日叶は口を開いた。 ディオは知っていたのだ。 週末の夜、この時間帯に慧がシャワーを浴びにここへ来る事を。 それを知っていて、わざとこんな風に――― そう責めようとしたその瞬間、強い力で身体を反転させられた。 「…痛……っ」 目の前にあった壁に、今度は背中を押しつけられる。 壁から突起した蛇口の左側、少し空いたスペースに上手い具合に身体は入りこんだものの、壁面に備え付けられたコックにしたたか左腕をぶつけてしまい、明日叶は小さく呻いた。 だが、その呻き声すら、すぐに重ねられた唇に掬い取られてしまう。 「………っふ………ぁ……っ…ディ……ォ」 ディオは無言のまま、貪るように舌を絡ませてくる。 ぴちゃぴちゃと粘着質な音が、遠慮無くシャワーブースに木霊する。 下半身に与えられる刺激はそのままに、大きくて熱い舌で何度も何度も上顎をなぞられ、今度こそ本当に膝の力が抜け始める。 「……ンぁ……っ……」 かくんと膝が砕けた。 と、明日叶の足に割り込むように差し入れられたディオの太腿に跨るような形で腰を落としてしまい、その刺激にまた身体が跳ねる。 もう、完全に直立したそれは、ふるふると涙を零して震えていた。 「明日叶……お前、エロすぎ………」 舌で口内を犯しながら、途切れ途切れにディオがそう零す。 「目の前に藤ヶ谷がいたのに…なんだよ、この感じ方、トロトロだぜ?」 「誰の……せ……っだよ……!」 涙目で必死に言い返すと、くしゃり、と無造作に髪を掴まれた。 そのせいで角度が変わり、口付けが深くなる。 お湯で貼り付いた前髪のせいで、ディオがいつもより幼く見えた。 そのせいか、剥き出しの荒々しさがより胸に迫って、どうしてだかたまらなくなる。 思わず両腕を伸ばして、その長身にしがみ付いた。 「いいぜ、明日叶。しっかり掴まってろよ?」 荒い息のまま、ディオが笑う。 絡まった舌を通じて、どちらのものか分からない唾液を飲み下せられるたび、そこに混じるアルコールの香りにくらくらと眩暈がする。 「俺はお前のもの、だから、な、ガッティーノ……好きなだけ、付けるといい」 何のことかと霞がかる頭で必死に考えていると、ディオがまた言った。 「お前にすがられた証拠だろ。むしろ甘くて―――煽られる」 痛みなんかよりな、とディオが呟く。 気付いてたのか―――!? 明日叶を、再び羞恥心が襲う。 脱衣所の光に晒された、赤い跡。 幾筋にも伸びたその細く長い傷痕は、まぎれもなくこの爪がつけたもの。 あられもなく乱れ、求めて、この男を欲しがった自分の証明。 ディオがニヤリと笑う。瞳を、鋭い光が走ったのを確かに見た。 「その代わり、お前にも俺の印、刻みつけてやる」 「……っぁっ……!」 同時に、鎖骨に鋭い痛みが走る。 「ここにも」 「や……ぁ……っ……!」 「ほら、ここ…っも…」 「ディオ……っ、ディ、オ……ぁ……っ……」 乳首に、脇腹に、そそり立つ分身のすぐ側の、腿の内側の柔らかい部分に。 少しずつ身体を屈めながら、ディオの大きな歯が容赦無く喰い付いてくる。 そのたびに、明日叶の身体に花が散った。 跪く格好になったディオが、つと見上げてくる。 明日叶を見詰めて、一瞬、眩しそうに細めたその瞳が、行為の荒っぽさに反比例するように、明日叶の心を優しく揺らした。 「全部、俺のだ、明日叶」 幼子のような、真っ直ぐで熱っぽい所有欲。 「俺だけを見てろ。俺だけを感じてろ。俺だけを」 けれど何故だろう。それがたまらなく明日叶自身を熱くする。 「ディっ………ああぁ……っ………!」 ディオの手の中ではち切れそうに泣いていた先端を、軽く前歯で抉られて、明日叶の視界が一気に白く弾けた。 名前を呼ぶ声は切なく尾を引いて、シャワーの音に吸い込まれていく。 「まだだ」 はぁはぁと浅い呼吸を繰り返す明日叶を片腕で支えて、ディオが立ち上がる。 「酔わせてやるよ、明日叶」 もう何も考えられない。 「俺のことしか考えられないくらいに」 そんなの、いつものこと、なのに。 そう伝えたかったけど、がくがくと小刻みに震える身体に、もうまともな言葉を紡ぐ力は残っていなくて。 ぐり、と昂ぶりきったディオの存在を入り口に感じた途端、かろうじて残っていた最後の理性が崩れた。 背中に這わした指先に、思いきり力を込める。 見上げたディオが、微かに目元を歪めたのが分かった。 |
---|
◆あとがき◆ まつかわ様から戴いたキリリクss、お題は「ディオ明日でエロ甘」でしたー♪[キリ番2300] おおお遅くなってすいませんでした……!兄貴、やっぱ難しいですね…orz 細かいご指定が無かったので、勝手ながら雪織の好きにテーマを付けさせていただきましたvv キーワードは「爪跡」「磨りガラス」「アルコール」。隠れワードが「独占欲」でした。 ライバル:慧の前で、明日叶ちんにあんなことこんなこと出来る自分に優位を感じながら、 慧の前なのに淫らに溺れる明日叶ちんに嫉妬して……って、じゃあどうすればいいんだよ! と明日叶ちんも怒りそうな(笑)いつも余裕なディオ兄貴の、矛盾する独占欲が書きたくて♪ エロ指定なのに、本番までいけずにすいませんでした…!(土下座) リクエストありがとうございましたっvv 2010.5.4 up |
×ブラウザを閉じてお戻りください×