ジン…、と、身体の真ん中に焼けるような感覚を覚えた。
視覚、聴覚、思考まで何もかもが緩やかにぼやける中で、その感触だけがやけにリアルで。引き攣れたような痺れが、たゆたう意識を現実に引き戻そうとする。



明日叶は、ぼんやりと考えた。
ここは、どこだろう。
今、何が起こっているのだろう。



「はぁぁ……っん……っ」
ふと気付くと、口が勝手に音を紡いでいる。
声と同時に吐き出す息が、地面ににくぐもって跳ね返り、自分の頬を熱くする。
「あぁ……っは…ん……やぁ…っ!」
我慢しようにも、耐えることを忘れた喉は、素直すぎる声を溢れさせてしまう。


……あれ?そもそも、何で我慢しなきゃならないんだっけ。


反射的に唇を噛み締めかけるが、ふとそんな疑問が頭をよぎった。


別に、構わないじゃないか。
頭の片隅で、恐ろしく甘美な囁きが明日叶をあやす。
だって、ほら。
こんなに、気持ちいい。




「あー……っ……あ、ん…っ、はぁっ……ん……っ」
「なに、センパイ。気持ちイイの?」
背後から、声がした。


―――センパイ?

そういえば、背中がやけに温かい。しっとりと湿っているのに、触れたその部分は冷えるどころか、狂おしいほどの熱に包まれている。
一瞬、ぼんやりとする頭で、自分の置かれた状況を考えようとしてみる。
けれど、この存在は間違い無く自分を安心させてくれるものだと本能が言い張るから、明日叶はまた、全身を走り抜ける快感に意識を戻すことにした。



「ん………すご、い…気持ちい………よぉ……っ!」
身体が欲するままに腰を激しく上下させると、堪え切れないほどの甘く切ない疼きが電流のように駆け巡り、明日叶は泣き崩れるように喘ぎ声を漏らした。
前に放り出した両腕が、ぐしゃぐしゃのシーツをぎゅっと手繰り寄せる。
ここまで来てようやく、明日叶は自分がベッドの上に四つん這いにされていることになんとなく思い当たった。

「参ったな…お仕置きのはずだったのに…」
意味の分からない呟きが耳元をくすぐったが、快楽を追うことにのみ集中する明日叶には聞こえない。
「もっ……あっ、あっ……!」
明日叶の息遣いが、急に早まる。限界が、近い。
「ダメだよ、センパイ。まだイっちゃ、ダメ」
高みに向けて加速しようとする寸前で、後ろから前に回された手に行き場を潰される。
「いやぁっ!」
強烈な、痛みを伴う焦れったさに、明日叶が叫んだ。
「やっ、やだ…っぁ……!」
「イきたいの?」
分かりきったことを尋ねてくる意地悪な声に、コクコクと素直に頷いて見せながら、明日叶はそれでもめげずに腰を揺らした。
「こら、センパイ。そんなことしたら、センパイが辛くなるだけっスよ?」
大きな手の中で、とめどなく溢れ続ける先走りが、ぐちゅぐちゅと酷い音を立てている。
ぎゅ、と更に力を込めて握りこまれたそこは、確かに腰の律動に合わせて擦れ、痛いくらいの快感を生み出してくれる。
だが、解放の出口を見つけられない苦しさが、徐々に明日叶を追い詰め始めていた。

「いや……痛……ぃ……ああ…っ、ん……っ…!!」

気持ちよすぎて、苦しい。痛すぎて、気持ちいい。―――どうしたら、いい。
いやいやと、額を擦り付けるようにして必死に頭を振ると、いきなり強い力で身体を反転させられた。
繋がったままのそこで、中の猛りがずるりと敏感な壁を容赦無く抉り、明日叶は思わず悲鳴を飲み込む。

「センパイ、見て」
熱しきった頬に、そっと触れてくるものがある。
その慣れた感触に、苦しくて仕方ないのに、思わずすり、と顔を寄せる。
「センパイ、オレを見て」
そのままこめかみに滑り込んだ指が、ぎゅっと強めに髪を掴んだ。
「わかる?センパイ。これがオレだよ?」
「あ………っ!」
言いながら、最奥まで貫かれた。
ずくん、と下腹部に響いた衝撃に、思わず腰が跳ねる。
ひっ、と鋭い息が喉を焼いた。
「ねぇセンパイ、分かる?オレが」
荒々しい行為からは想像も出来ないほど、弱々しく悲しそうな声が振ってくる。
「オレは、センパイ以外、もう目に入んないよ……お願いだから、頼むから、センパイもオレだけ見てて」
お願いだから、と、腰を打ち付けるたびに何度も何度も繰り返す。

ぱた、ぱた、と上から落ちてくるものは。

「た、いよ………?」
考えるより先に、勝手に口が開いていた。
何よりもこの舌に馴染んだ、名前。
身体の上で、その顔がくしゃくしゃに歪むのが見えた。
少しずつだが、全てがクリアになっていく。


そう、これは俺が一番大切に想ってるヤツ。
無邪気で、素直で、泣き虫な。
誰よりも愛おしくて可愛い、俺の恋人。


「……太陽……」
一度認識すると、可笑しいくらい心がその名前を求め始める。
「太陽、たいよ……っ…」
滑稽なほど、何度も呼び続けた。
その名を口にするだけで、湧き上がる熱の温度が上昇する。

もう、だめだ。もう、耐えられない。

鉛のような両腕を必死で持ち上げて、自分を揺さぶる身体に巻きつけた。
その意味を心得たとばかりに明日叶の腰を抱え直すと、拘束し続けていた片手をふと緩める。
「あー……っ、あー……っ……!」
細く長く伸びる声に合わせるように、とくり、とくり、と白濁した液体が少しずつ零れる。
中途半端な解放が、じりじりと敏感な先端を嬲り倒す。
「ゴメンね、我慢、させすぎちゃった」
壊れたレコーダーのように、小さく喘ぎ声を上げ続ける明日叶にキスを落とすと、離れた手が再びそこを包み込む。
「あああっ…!」
再開した腰の動きに合わせて、思い切り上下に扱き上げられる。
前に与えられる直接的な刺激と、奥底を突く熱の塊に攻め立てられて、明日叶の身体がようやく頂上へと押し上げられていく。
「……っ…!」
泣きながらしがみ付いてくる身体を、これ以上無いというくらい強く抱き締めると、太陽は腕の中の明日叶に思いの丈を注ぎ込んだ。同時に、手の中に驚くほどの量の、濃く熱いものが溢れる。

「オレだけのものでいて、センパイ」
どくどくと、自分の狂おしいほどの独占欲を搾り出すようにして明日叶を抱きながら、太陽は呟いた。
「何をするのも、何を話すのも。オレだけを特別にして?センパイ……」
意識を手放したまま、びくびくと腕の中で跳ねるその身体を、今度はそっと抱き締め直す。
「浮気は……許さないっスよ?オレだけを」
掠れた声で、ちょっとおどけたように、ほんの少し切なそうに続ける。
「オレだけを見て。オレの傍にいて。オレ以外の男に、触らせないで」
祈るように口付けると。
「大好きなんだ、センパイ」



ぱたり、と温かな液体が、明日叶の頬を濡らした。













◆あとがき◆

太陽、ヤキモチ編でした♪太陽が嫉妬したら〜…と妄想しながら書いた産物。
『肩の位置』の番外編と見ていただいてもOKでございます。
この話だけでも独立してる……つもりですが。
ぽやぽやしてるように見えて結構独占欲強い、っていうかキレたら怖いと思いますよ、あのテは。
兄貴のイベントに「覚えろ、これが俺のキスだ」ってのがありましたけど、
私の中では太陽も似たようなスタンスです。犬だけにマーキングは本能、と。(さすが弟分!)
公式で「もうちょっと自分を特別扱いしてほしい」って太陽のコメントがあったので。
うはうはしながら膨らませてみました(笑)
あ、ちなみにこの明日叶ちん、ベロベロに酔ってます。前作未読の方のために一応お断りを。
普段、羞恥心とか躊躇いとかにガチガチに縛られちゃう明日叶ちんだからこそ、お酒が入ると
自分の欲求に素直になってくれると非常に美味しい。
…起きたあと、記憶戻ったら自殺しかねんが。そこはまぁ、上手く丸め込むんだよ太陽!
久々にえち書いたら楽しかったー!(笑)

2010.5.30 up







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